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・ 【作品詳細】人はみな海底に眠る鉱物資源 ~いまだ光を放たざる曙光の物語
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第一章 運命と意思

宇宙文明の根幹を成すレアメタル

希有な技能を持ちながら、人員整理で解雇されたヴァルターには悲しい過去があった。十三歳の時、故郷ネーデルラントの干拓地が未曾有の大洪水に襲われ、堤防を守りに戻った土木技師の父親が高波に呑まれて命を落としたのだ。母は裕福な元婚約者と再婚するが、新しい暮らしに馴染めず、継父と諍って、家を飛び出してしまう。
その後、商船学校で学び、潜水艇パイロットの職も得るが、壊滅した干拓地では世界的建築家を迎えて商業エリアを再建する計画が持ち上がり、異議を唱える。長年、復興ボランティアに尽くしてきた仲間と共にアイデアコンペを通して対決する。彼の提案した『緑の堤防』は地元民に支持されるが、建設会社の意匠を盗用したかどで告発され、やむなく示談書にサインする。
裏切り者として故郷を追われた彼は、自暴自棄になって、ステラマリス(地球)を飛び出す。

  1. 『復讐するは我にあり』世界を変える稀少金属ニムロディウムと企業の攻防 - 宇宙世紀。みなみのうお座に打ち上げられた探査機が一つの鉱石を持ち帰る。そこから発見された新物質ニムロディウムによって科学技術は著しく発達し、宇宙開発も加速的に進むが、最大のニムロデ鉱山がファルコン・マイニング社の手にわたったことで、ファルコン・グループによる一党支配が始まる。
  2. 文明の根幹を成すレアメタル ~独占する鉱山会社と伝説の祖父 - ファルコン・マイニング社の脅威は、ニムロディウム市場のみならず、最大の宇宙植民地である惑星自治領トリヴィアの政財界、しいては、人類の母星であるステラマリスにまで及ぶようになっていた。マクダエル特殊鋼とは、技術特許をめぐって争った因縁の仲。彼等の魔の手はついにマクダエル一家の生命に及ぶ。
  3. 『人こそ資本』 深海の鉱物のような人間の可能性と『捨てるな』の精神 - 水深3000メートルから海底鉱物資源の採掘に挑むアルは深海の作業に必要な潜水艇のパイロットを求めている。優れた経営者でもあるアルの経営哲学は『人こそ資本』。その心髄は可能性を捨てるなという祖父の教えだった。
  4. 今成すか、永遠に行わないか ~決断と意思の強さが成功に導く - アステリアの大海原を前に、海中技術の困難を思い知ったアルは、長年かけて練り上げた海底鉱物資源の採掘計画について断念しかけるが、今成すか、永遠に成さないか(Nunc aut numquam)を自身に問いかけ、決意を新たにする。愚かな二番手は永久に一番手の尻をを舐め、何を見せても二番煎じと嘲られるだろう。
  5. 屁理屈だけは超一流 ~今日の利益か、数億年後の生命の価値か - 宇宙的な時間の流れから見れば、人類の栄枯盛衰などほんの一瞬に過ぎないし、まして個人の寿命など、ろうそくの炎みたいに儚いもの。人の心は宇宙より広いと思えるのは、人間の内側にも何かを創り出すエネルギーが満ちているからではないでしょうか。
  6. アイデアと可能性 ~今は必要なくても、いつかは誰かが必要とするかもしれない - どうして誰も欲しがらないと決めつけるんだい? 遠い将来、それこそ何世紀という未来、海のど真ん中でも建設可能な干拓都市の構想が必要とされるかもしれないよ.。君が言うような『空想ごっこ』を真剣に考え抜いた人がいたから、恒星間航行も可能になったんだ。
  7. オランダの治水と締め切り大堤防 ~意思が世界を形作る - オランダのアフシュライトダイク(締め切り大堤防は、1927年から1932年にかけて、国家的な治水事業の一環として建設された。全長32キロ、幅90メートル、高さ7.25メートルの威容を誇る治水施設の魅力を写真と動画で紹介。
  8. この世が生きるに値する場所と分かれば、子供自ら学ぶようになる - 人は言葉によって、自身の考えや欲求や感情を表し、相手に伝えることができます。一言といえど、そこには、発した人の心があり、動機があります。言葉とは、全人的な存在なのです。言語療法の先生は「自分を好きになること」が大事と教えます。
  9. 『これが生だったのか。それなら、よしもう一度!』 自己肯定と魂の幸福 ・ニーチェの哲学より - 自己肯定の精神は、代々、読み継がれたニーチェの著書『ツァラトゥストラ』のテーマでもあります。「この人生をもう一度生きてもいい(永劫回帰)」と思えるほどに、自分自身と生きることを愛する。それが本当の意味での問題解決=自己超克だと言って聞かせます。
  10. 数百年に一度の水害に備えて ~オランダの堤防と治水 - 海も大地も何千年、何万年の長いスパンで活動を続けています。『絶対に大丈夫』などと、どうして言えるのか。オランダ南部、ゼーラント州のスヘルデ河口に建設された締切堤防や防潮堤防によって作り出された湖の画像などを掲載しています。
  11. 海は生きとし生けるものの故郷  アルベールⅠ世とモナコ海洋科学博物館 - 海は生きとし生けるもの、すべての故郷よ。生命は海から生まれ、空に、陸に、巣立っていったの。陸に上がった人間が今もこうして海を懐かしむのは、海に暮らした何億年もの記憶を今も留めているからかもしれないわね。
  12. 大洪水と父の死 繰り返される悪夢と心的外傷 - 故郷の干拓地を壊滅した大洪水で、ヴァルターの父親は堤防を守りに戻って命を落とす。故郷と最愛の人を失った悲しみは十三歳の彼の心を深く傷つけ、悪夢となって繰り返される。
  13. 処世の知恵と真理の違い 人は魂で生き、理性で現世を渡る - 最愛の父を亡くしたヴァルターは経済的理由から母の昔の婚約者で再婚相手の家に身を寄せるが、継父のラクロワ氏は父とは全く異なる価値観の持ち主だった。ラクロワ氏の説く処世術はどれも納得いくものだったが、父の教えの方が心にしみる。真理は処世とは異なることを実感するうち、継父への不信感を募らせていく。
  14. 潜水艇のパイロットを目指す ~深海に魅せられて - 商船学校の特別研修で初めて潜水艇プロテウスを目にしたヴァルターは深海に強く魅せられる。そこは暗く冷たい死の世界ではなく、生命に満ちた温かな揺りかごだった。父の面影を求めてヴァルターは潜水艇のパイロットを目指す。
  15. 創造的であることが、あらゆる苦悩から我々を解き放ってくれる - 大洪水から6年の歳月が経っても未だ悪夢と喪失感に苦しむヴァルターは同郷の大学教授の講演に足を運び。「人間とは乗り越えられるものだよ。創造的であることが、あらゆる苦悩から我々を救ってくれる」と励まされる。
  16. 復興ボランティアと心の再建 ~今日の努力が常しえに故郷を支えるように - 復興とは何か 一口に『復興』といっても、いろんな道筋があります。 建物の復興。 自治体の復興。 経済の復興。 心の復興。 何をもって「立ち直った」とするかは、人にもよるし、立場や自治体によっても違います。 ある人にとっては、もう終わったことでも、別の人にとっては、まだ終わらぬこともあります。 行政的 […]
  17. 進まぬ復興とリゾート計画 ~元住民の願いと地元経済界の思惑  - ヴァルターは洪水で壊滅した故郷の惨状を知り、復興ボランティアに参加するが、被害があまりに広範な為、復興作業も遅々として進まない。地元経済界は被災地一帯をモダンな臨海リゾートに再建する計画を打ち出し、元住民らは猛反発する。
  18. 故郷の再建に必要なこと ~土地が蘇れば、何十年、何百年と作物を実らせる - ヤンとヴァルターを中心とする復興ボランティアの必死の努力により、洪水で壊滅した干拓地も徐々に緑を取り戻しつつあったが、再建を急ぐ自治体と地元経済界の思惑が結びつき、一帯をモダンなリゾートにリビルドする臨海都市計画が持ち上がる。意思をもった人間として抗う決意をする。
  19. 人工地盤と緑化堤防 ~インプラント工法と地盤造成の技術 - 未曾有の大洪水によって壊滅的な打撃を受けたフェールダムは復興ボランティアの必死の努力により、大地に徐々に緑を取り戻しつつあった。だが、再建を急ぐ地元経済界は臨海都市計画を立案。ヤンとヴァルターは人工地盤とインプラント工法の緑化堤防を用いたアイデアを対案に立てる。
  20. 干拓地の未来を託す再建コンペ  ~骨一本になっても愛する故郷を想う - 未曾有の大洪水によって壊滅した故郷の干拓地フェールダムの再建をめぐり、地元経済界と自治体は世界的建築家フランシス・メイヤーを迎えて、臨海都市リゾート計画を打ち立てる。ヴァルターとヤンは地元住民の意を伝える為に再建コンペに参加する。
  21. 建築家の詭弁と住民無視の再建計画 一人の意思もった人間として抗う - 壊滅した故郷の再建案をめぐり、意見が真っ二つに割れる中、臨海都市計画を手掛けた建築家フランシス・メイヤーが干拓地の視察を兼ねて講演会を催す。ヴァルターとヤンはメイヤーの真意を探る為に講演会に参加するが、メイヤーの言葉に住民への思いやりは微塵も感じなかった。
  22. 意匠の盗用か、インスピレーションか? パースの模倣をめぐる創意と誤解 - ヴァルターは故郷の再建をかけて再建コンペに参加する。彼らが提案した『緑の堤防』は地元住民の圧倒的な支持を得て、一般投票で一位に選ばれるが、建設会社ロイヤルボーデン社に意匠の盗用を疑われ、仲間を救いたい一心から示談書にサインする。
  23. 海底鉱物資源を採掘せよ 世界を変える稀少金属と世界の鉱山問題 - なぜ海底鉱物資源の採掘が必要なのか、技術的難易度から説明。文明を支える希少金属と鉱業の現状などについて解説。実際に開発が進む海底鉱物資源の採鉱システムのモデルや採掘に伴う環境破壊に関する情報も紹介しています。
  24. アイデアは資本に優先する ~本田宗一郎の言葉より - 『アイデアは資本に優先する』というのは、HONDAの創業者、本田宗一郎の言葉です。たとえ十分な資本がなくても、設備や技術が不足しても、優れたアイデアはあらゆる障壁を超克して、世界を変えるという教えです。
  25. アイデアを持ち続ける意義 大友克洋の『AKIRA』より - アイデアはどこからやって来るのか サイバーパンクの傑作と名高い大友克洋の『AKIRA』の映画版にこんな台詞があります。 前にリュウが言ってたわ。アキラって、絶対のエネルギーなんだって。 人間ってさあ、一生の間にいろんな事をするでしょう。何かを発見したり、造ったり……。 家とかオートバイとか橋や街やロ […]

第二章 採鉱プラットフォーム

深海 ~ムーンプールに広がるもう一つの宇宙

水深3000メートルの海底下で、揚鉱管や集鉱機を繋ぎ、採鉱システムを完成させる『接続ミッション』を六週間後に控え、現場の士気は最高潮だが、新参のヴァルターに対してマネージャーらの態度は素っ気ない。今さら潜水艇のパイロットなど必要ないという熟練スタッフに対し、ヴァルターはテスト潜航の必要性を力説し、そこにリズに片想いする大学生兼パイロット補佐のエイドリアンが絡んで、三つ巴の様相となる。そんな彼を温かく励ますリズと次第に心を通わせるようになるが、二人の間には、父親であり上司でもあるアルの存在が巌のように立ち塞がっていた。

  1. 海の惑星アステリアと採鉱計画 ~宇宙文明を支えるものはボロボロになった人の手 - アル・マクダエルに見出され、海の惑星アステリアに来たヴァルターは想像以上に開発の進んだ湾岸風景に目を見張る。何故海底鉱物資源の採掘に挑むのか訝るヴァルターに、セスは「宇宙文明を支えているのは科学技術ではなく、鉱害病でボロボロになった人の手」と諭す。
  2. 宇宙文明を支える鉱物資源 ~なぜ採鉱システムの技術革新が必要なのか - 技術革新は、時に大量破壊兵器や環境汚染などを生み出し、人を傷つけもしますが、ウォークマンやスマートフォンが庶民のライフスタイルを大きく変え、日の当たらなかった場所に様々な可能性をもたらすことも多いです。海底鉱物資源の採鉱システムのその一つです。
  3. 鉱業の歴史を変える海底鉱物資源の採鉱プラットフォーム ~Nautilus社の採鉱システム・モデルより - 初めて洋上の採鉱プラットフォームを訪れたヴァルターはその威容と機能に圧倒される。水深3000メートルの海底下から海底鉱物資源を採掘するにあたってポイントになったのはコンピュターシミュレーションの技術だった。会社ごと買収したアル・マクダエルは先行者利益について語る。
  4. 世界を変える技術と人間の可能性 産業発展と共存共栄の精神 - 世界初となる海底鉱物資源の採鉱プラットフォームを訪れたヴァルターは、アル・マクダエルの熱意と気魄に圧倒され、逆に意気消沈する。そんな彼にアルは産業発展の要は共存共栄の精神であることを説き、いやいやでも海の仕事をするうちに自分が何ものかを思い出すと励ます。
  5. 鉱業の完全自動化を目指せ 深海の破砕機と集鉱機のオペレーション - 洋上のプラットフォームは完全自動化された採鉱システムを備え、鉱業の在り方や社会構造を根底から覆すものだった。ヴァルターは潜水艇のパイロットとして接続ミッションに参加する意思を明らかにするが、それは未経験の深海での機械作業だった。
  6. 潜水艇の水中作業 ~オレでも海底でマドレーヌが焼ける~ - 深海での揚鉱管接続ミッションを求められ、未経験の水中作業に戸惑うヴァルター。潜水艇の運航主任フーリエは子供の玩具のように大きな機械のパーツを見せ、「オレでも深海でマドレーヌが焼ける」とヴァルターを励ます。
  7. 深海のマッピング ~海底鉱物資源採掘の成否を決定するもの - 海底鉱物資源の採鉱事業の成否を決定付けるのは、海底地形と鉱物資源の賦存状態を正確に把握することだ。深海底のマッピング技術には予算と技術が注ぎ込まれており、トップレベルの機密だと説明する。
  8. 鉱業権と鉱山会社の寡占 鉱業法の盲点と情報共有のアイデア - 『宇宙の領土はいかなる国家にも属さない』という法律の隙間をかいくぐり、文明の基礎を支えるニムロデ鉱山を一手に治めたファルコン・マイニング社。鉱業局を意のままに操り、鉱業権さえも左右してきたが、海洋技術は簡単に真似できないとヴァルターは主張する。
  9. 完全無人化か、有人潜水艇による目視か ~技術の進歩で不要になる人材と現場のマネジメント - 海底鉱物資源の本採鉱が迫る中、プロジェクト・リーダーの横暴のトラウマから、無人機の若いオペレーター達は水中の接続作業の完全無人化を主張し、潜水艇のパイロットであるヴァルターは目視の重要性を説く。
  10. 想像力で深海に潜る ~有人潜水艇の耐圧殻で夢見る生命の世界 - 有人潜水艇プロテウスの格納庫を訪れたリズはパイロットのヴァルターと鉢合わせ、深海調査の仕事について聞くうち「私も乗ってみたい」と申し出る。ヴァルターはリズを潜水艇の耐圧殻に誘い、「想像力で潜るんだよ」と夢の中で深海の様子を語って聞かせる。
  11. 永遠の環 ~すべてのものは形を変えながら永遠に廻る(タイタニックの思い出付き) - 採鉱プラットフォームのヘリポートから日没を見つめるうち、ヴァルターは父が教えてくれた「永遠の環」の教えを思い浮かべる。「これが生だったのか、それなら、よしもう一度」のニーチェの永劫回帰の思想を分かりやすく説いたものだった。
  12. 水中無人機の調整と訓練 ~実験プールにて~ - 海底鉱物資源の採鉱システムの接続ミッションに向けて、ヴァルターは実験用プールを使った水中無人機の調整に立ち会う。実際の水中無人機のオペレーションの様子を動画と写真で紹介
  13. ウミガメの産卵 ~見守るしかない親の愛と子供の人生 - 満月の夜、誰に教えられなくても、ちゃんと海に還っていくウミガメの赤ちゃん。大きく成長したら、今度は産卵の為に故郷の海に戻ってきます。そんな赤ちゃんの旅立ちを見守るウミガメのお母さんはどんな気持ちでしょうか。
  14. 拒絶の中でも、学ぶ者は学ぶ ~失恋した時、どうするか~ - 互いの境遇を語り合ううちに、二人は絆を深め、リズは恋心を告白するが、ヴァルターの態度は素っ気ない。訳が分からず、失恋したと落ち込むが、そんな娘に父親のアルは「拒絶の中でも学ぶ者は学ぶ」と諭す。
  15. 深海で潜水艇にトラブルが起きたらどうなる? - 深海での接続ミッションを前に、当日アシスタントを務める大学生のエイドリアンに潜水艇で事故が起きた場合の心構えをレクチャーする。一般人は耐圧殻の爆発を連想するが、実際は二酸化炭素の貯留が命取りになるという話。
  16. 淋しさなんて、慣れるもの? ~海の仕事と孤独と優しさ - 嵐の中、急病のワディを島に送り届けたヴァルターは、後日、ワディの直属の部下オリガと食堂で鉢合わせる。主任会議ではミッションの完全無人化をめぐって対立したが、彼に対する見方を改めたオリガは互いに一人の淋しさを語り合う。
  17. 本当の心の強さとは ~無理に鋼になろうとするな - 堤防を守りに戻って高波に呑まれた父の最期の様子を聞かされ、激しく動揺する。父は数分差で救援の車に乗り遅れ、高波に呑まれたのだった。運命の仕打ちを嘆くヴァルターに、アルは本当の心の強さと生き方について説いて聞かせる。
  18. 集鉱機の降下と水中の接続作業 ~『運』も成功の要素 - 現場や企業の思惑が交錯する中、水深3000メートルの海底下に、海底鉱物資源を採掘する為の集鉱機と破砕機が海中降下される。嫌われ者のプロジェクトリーダーが無くなって、無人機の若いオペレーター達がリラックスして作業に取り組む姿を見て、サブリーダーのマードックは『運』も成功の要素だと説く。実際の水中無人機のオペレーションの様子を動画で紹介。
  19. 深海 ~ムーンプールに広がるもう一つの宇宙 - 洋上施設に設けられた作業用の開口部はムーンプールと呼ばれ、海面に直結している。その向こうに広がる深海はさながらもう一つの宇宙であり、惑星のダイナミックな息づかいに満ち満ちている。ヴァルターとリズはムーンプールを訪れ、海の秘めたエネルギーについて語り合う。
  20. 一つ一つの航海が心の糧 ~潜水艇の準備・未来を繋ぐ為に - 採鉱システムの揚鉱管、高電圧リアクター、集鉱機を繋ぐミッションが迫る中、格納庫では潜水艇プロテウスの潜航準備に忙しい。ヴァルターは長年親しんだ船体を見上げながら、一つ一つの航海が心の旅路だったことを思う。
  21. 無人機による水中作業 集鉱機と揚鉱管の接続とストレインセンサーの取り付け - 水深3000メートルの海底から稀少金属ニムロディウムを含む海台クラストを採掘する為の採鉱システムの接続作業が始まった。ヴァルターは潜水艇プロテウスから小型無人機をランチャーし、高電圧リアクター、揚鉱管、集鉱機を繋いでいく。
  22. 一つの人生に一つの目的 ~人はみな深海に眠る鉱物資源 - 採鉱システムの接続ミッションを完遂して、プラットフォームは歓喜するが、念願の本採鉱を達成したというのにアルの表情は冴えない。アルは未来に思いを馳せるヴァルターに、人生に目的をもつ尊さと、人はみな深海に眠る鉱物資源のように可能性に満ちていることを説く。

第三章 海洋情報ネットワーク

第三章 海洋情報ネットワーク

採鉱プラットフォームの成功は自由公正をもたらすかに見えたが、アステリアに眠る膨大な鉱物資源を求めて、ファルコン・マイニング社やその他の企業も開発公社を結成して乗り込んでくる。寡占を阻止する為、ヴァルターは情報共有による事業の透明化と知的基盤の強化を訴えるが、理想とするネットワークの構築には莫大な資金やノウハウを必要とする為、一朝一夕には運ばない。
彼のアシストを務めようとリズが必死になればなるほど、二人の関係はぎくしゃくし、とうとう喧嘩になってしまう。

  1. 鉱山会社と金属市場の寡占 ~それでも海洋技術は簡単に真似できない~ - 海底鉱物資源の採鉱システムに対抗して、稀少金属ニムロディウムの市場を一手に収める鉱業界の巨人ファルコン・マイニング社が動き出す。採鉱プラットフォームのスタッフらは動揺するが、困難を知り尽くすヴァルターは海洋技術は簡単に真似できないと看破する。
  2. 忍び寄る大企業の寡占 ~情報共有と知識の浸透が社会と産業の発展を促す - ウェストフィリア海域に広大な資源調査権を獲得した鉱業界の巨人ファルコン・マイニング社は、MIGの採鉱事業と既存社会の威圧にかかるが、海洋技術の困難を知るヴァルターは簡単に真似できないと主張し、海洋情報の共有システムの構築を思い付く。
  3. 海洋情報ネットワーク 海洋社会の知的基盤を強化する - 鉱山会社による寡占を防ぎ、各人の公正な利益と競争を守る為、ヴァルターは知的基盤としての海洋情報ネットワークの重要性を説く。誰が管理するのか、予算はどこから得るのか、問題も山積みだが、社会に対する問題提起が大事と主張する。
  4. 親は死んで子どもの血肉となる ~鮭の産卵より - サケの親の死骸は自然に腐敗して、卵が孵る頃には栄養豊かな食べ物になる。救われるのは稚魚だけじゃない、熊やキツネなど、冬を越した森の動物たちの食糧にもなる。食い散らかされた鮭の死骸は一つ残らず稚魚や動物の糧になり、川と緑を育むエネルギーに生まれ変わるんだよ。
  5. 生物冶金と新技術の意義 世界に可能性を知らしめる - 採鉱プラットフォームでは海台クラストの本採鉱が始まり、安価で良質なニムロディウムが市場に出回れば技術のみならず政治経済にも大きな影響をもたらすのは必至だ。だが、採鉱事業の目的は莫大な利益をあげることではなく、世界に可能性を知らしめる事だった。
  6. 意見するのに経験と資格が必要ですか? 第一人者のプライドと素人の疑問 - 海洋情報ネットワークを構築する為、業界の第一人者である企業の担当者を訪ねるが、君に意見する資格があるのかと突っぱねられ、面談は物別れに終わってしまう。専門家と素人の意見交換でありがちな「素人のくせに」は本当に問題解決に有効なのか。
  7. 誰がローマのビジョンを描くか ~アイデアを社会に提示する - 社会の知的基盤として海洋情報ネットワークの構築を進めるヴァルターは区政の意見を聞く為に産業労働部を訪れる。企業進出や人口増大に伴い混乱する区政において一番大事なのは「誰がローマのビジョンを描くか」だと指摘される。
  8. 失敗しても、己のプライドが傷つくだけ  - 社会の知的基盤となる海洋情報ネットワークの構築に向けて、方々に働きかけるヴァルターだが、実現には程遠い。だがアルは、社会に問題提起すること自体に問題があると諭し、「失敗しても、せいぜい己のプライドが傷つくだけ」と励ます。
  9. 愛と疑いは一緒にいられない ~あなたは彼に恋しているだけ - ヴァルターに激しく恋をするリズは「あなたは彼に恋しているだけ。本当に愛しているのは彼の方だ」と指摘され戸惑う。エヴァは『愛と疑いは一緒に居られない』(ギリシャ神話「エロスとプシュケ」の寓話)を語って聞かせる。
  10. 施工管理の面白さ ~箱が生活の場を作り、人が集まれば社会が形成される - 施工管理士のマックスは、人が集まれば文明が生まれるCivilization(土木)の意味を実感し、「やらねばならぬ」の施工管理の面白さと情報共有をベースとする最新の管理システムを紹介する。
  11. 不正に目をつぶるか、個人の正義感を信じるか ~建築家の野心と大企業の打算が結びつく時 - 急ピッチで開発が進むペネロペ湾を訪れたヴァルターはマックスから洋上のヴェニスと称えられる巨大な海上都市「パラディオン」の建設計画を聞かされる。建築家メイヤーの因縁に衝撃を受けるヴァルターに「個人の正義感でどうにかなるものではない」と諭す。
  12. 数十年もすれば老朽化する商業施設に巨額の予算を投じるより - ペネロペ湾では建築家メイヤーとロイヤルボーデン社がタッグを組み、『洋上のヴェニス』と称される円環の海上都市の建設計画を推し進めていた。メイヤーと対峙したヴァルターはわだかまりを水に長そうとするが、故郷の再建計画をめぐって恨みが再燃する。
  13. 「幸せになるのが怖い・・」 幸せとは新しい価値観を受け入れること - 自ら揉め事を起こし、足を滑らせるヴァルターに、エヴァは「幸せになるのが怖いの?」と問いかける。幸せな考え方とは何なのか。ちょっとしたコラムです。
  14. 未来のビジョンを『絵』に描く 大衆の心を動かす具体なイメージと実現可能な技術検証 - ペネロペ湾に巨大な円環の海洋都市『パラディオン』が建設されれば、悪しき慣習と構造が持ちこまれ、同じ資本と権力が跋扈する。未来の硬直化を懸念するアルは、ヴァルターの描く『リング』こそアステリアに豊かさをもたらすと確信し、娘のリズに胸の内を明かす。
  15. 鉱物資源データベース ~産業振興の知的基盤を構築する - 海洋産業の振興と住民の関心を高める為に海洋情報ネットワークの構築を急ぐが、事はそう簡単ではない。一人で気負うヴァルターにメイファン女史は、自分のアイデアをいかに周りに説得するかだと説く。
  16. それでも人生はいいものだ 。もう一度生きてもいいと思えるくらい - 過食症による超肥満から心臓発作に倒れたダグは、採鉱プラットフォームの引退を余儀なくされる。家族もなく、恋人もなく、人生の大半を仕事に捧げながらも、見舞いに訪れたヴァルターに「それでも人生はいいものだ」と前人未踏の採鉱システム完成の充実感を語る。
  17. 一般ユーザーに説明する ~この世の九割は「分からない人」  - 海洋産業の振興と住民の関心を高める為に海洋情報ネットワークの構築を急ぐが、事はそう簡単ではない。一人で気負うヴァルターにメイファン女史は、自分のアイデアをいかに周りに説得するかだと説く。そんな折り、鉱業資源データベースの存在を知り、自信を深める。
  18. 一般人にも分かりやすい海の情報の玄関口 オーシャン・ポータルを作る - 海洋情報ネットワークの構築に向けて基金設立に話が進むが、高額の予算が必要なこともあり、ちゃんと機能するか現場は懐疑的だ。それでもリズは一般人の関心を高める為の情報サービスは必要と強調し、ヴァルターは海の情報の玄関口『オーシャン・ポータル』を提案する。
  19. 二つの正義と罪の平原 文明を支える鉱業とそれを利用する人々の責任とは - 鉱業局の調査官が採鉱プラットフォームの立ち入り調査にやって来る。ヴァルターはファルコン・マイニング社の差し金と疑い、否定的な態度を取るが、調査官は相対する二つの正義について語り、罪の平原に立てば、鉱山労働者への責は皆同じだと説く。
  20. 存在理由などなくても、とりあえず生きてみる - 一流IT会社に就職したものの、アッパーな雰囲気に馴染めず、周りから浮いてしまうプログラマのゾーイ。些細なことでヴァルターと口論になり、会社を飛び出してしまう。ゾーイと一緒にランチを取りながら、意味がなくても生きている深海の生物に喩えながら彼女を励ます。
  21. 誰がアイデアを形にするかで、この世は変わる ~人の意思と品性がアイデアの価値を高める - どれほど優れたアイデアも、曲がった意思が働けば歪な世界を作り出すし、アイデア自体は優れなくても、善き意思がそれを優れたものに育てることもある。専門家だから、その道の権威だから、必ずしも優れたアイデアを生み出すとは限らない。
  22. One Heart, One Ocean 海に生きる人々の願い ~立場や思想を超えて - それぞれが利益や幸福を追い求めるにしても、共同体には一つの目標が必要だ。だが、今のアステリアには個々を繋ぐ理念がない。そんな中、アニバーサリー・ケーキに描かれた『One Heart, One Ocean』のメッセージに目を見張る。

第四章 ウェストフィリア・深海調査

ウェストフィリア

ファルコン・マイニング社を機関とするウェストフィリア開発公社は北方の火山島ウェストフィリアの資源探査に乗り出す。ヴァルターは深海調査の要請を受けるが、氷に閉ざされた謎の火山島には、青い貴石をめぐる悲話があった。ファルコン・マイニング社の私利私欲の為に、虚偽の報告を強要され、ヴァルターは科学者の良心と脅迫の狭間で揺れ動くが、深海での不思議な光景が彼の迷いを払拭する。

  1. 有人潜水艇と深海調査 パイロットの矜持 ~たとえ名前は知られなくても - 有人潜水艇のパイロットとして海底鉱物資源の採鉱システムの接続ミッションに参加する意思を固めたが、高電圧リアクターと揚鉱管を繋ぐ水中作業がメインと知って激しく動揺する。マードックは潜水艇の設備を見せ、お前にも出来ると励ます。
  2. 深海に眠る海底鉱物資源を探せ 海洋調査のオファーと資源探査の社会的意義 - ウェストフィリア島と近海に眠る鉱物資源を探査する為、オリアナが深海調査のオファーに訪れる。ファルコン・マイニング社の意向にヴァルターは疑念を感じるが、ウェストフィリア探鉱がもたらす利益と潜水艇の新米パイロットが置かれた立場を思い、オファーを引き受ける。
  3. 神の宿る火山島ウェストフィリアと開発公社の思惑 - 北方の火山島ウェストフィリアは鉱物資源の宝庫であり、鉱山会社の思惑がどうあれ、探鉱に成功すれば経済成長にも弾みがつくとフーリエは主張する。だが深海調査の陰にファルコン・マイニング社の意向が強く働いていることに、ヴァルターは疑念を募らせる。
  4. 意味が無くても、名無しでも、みんな生きてる ~君に深海を見せたい理由 - 潜水艇からの実況を条件にウェストフィリアの深海調査を引き受けるが、オリアナは彼の申し出を無視し続ける。同僚のゾーイは誰も深海の実況など興味ないと主張するが「君は『面白くないこと』の先は見ようとしない」とヴァルターは反論する。
  5. 愛の貴石 ブルーディアナイト ~針状結晶と富の宝庫~ - ウェストフィリア探鉱を目論む鉱山会社のロバート・ファーラーは、稀少金属ニムロディウムの針状結晶を含む青い貴石ブルーディアナイトを手中に収める。それは恋人からの愛の贈り物であり、血生臭い事件の証拠でもあった。
  6. 学界に名誉の旗を立てるだけが学問か? 血塗られた貴石と科学者の誇り - ニムロディウムの研究を続ける鉱物学者イーサン父子には、ニムロイド鉱石の謎を解き明かし、鉱業改革に役立てたいという願いがあった。だがマグナマテル火山の噴気孔で美しい貴石ブルーディアナイトを発見した為に陰惨な事件に巻き込まれる。
  7. 潜水艇パイロットの矜持 一生誇りに思えるように ~初めての深海調査 - ウェストフィリア近海の海底鉱物資源に執着するロバート・ファーラー社長は自らが出資する開発公社を使ってメテオラ海丘の深海調査を指示する。初めての潜航を前に、不安に青ざめる新米パイロットにヴァルターはパイロットの矜持を説く。
  8. 生命を選別する宇宙開発 ~どの生物を残し、どの生物を見殺しにするか。人間の究極のエゴ - 深海の調査が進む中、潜水艇の耐圧殻でノックス研究員が宇宙人コードについて尋ねる。宇宙の開発地で土着生物が発見された場合、何を保護し、何を見殺しにするか、人間の究極のエゴともいうべき法律だ。
  9. この会社で働いていると胸を張って言えるのか ~経営者の倫理と法令遵守 - 海洋調査が進む中、ファルコン・マイニング社のファーラー社長が視察にやって来る。自社の従業員もモノとしか思わぬ態度に、『わたしはマイニング社で働いています』と胸を張って答えられる従業員がどれだけいるのかとヴァルターは詰責する。
  10. 権力に折れるか、科学の良心に従うか ~学説も金で買える時代だよ - 深海調査が順調に進む中、一人のスタッフが画像データの改竄を指摘する。そこにはウェストフィリア島の真実が隠されていた。調査の出資者でもあるロバート・ファーラーは「深海で何を見ても見なかった振り」を強要し、ヴァルターは科学者の良心から反発する。
  11. 宇宙の片隅の一期一会 ~発見は己の内側からやって来る - 深海調査の視察に訪れたファーラー社長は「深海で何を目にしても、見て見ぬ振りをしろ」とヴァルターに迫る。科学の良心の狭間で揺れる彼に、元上司のランベール操縦士長は「その場に行けるのは一度きり」と宇宙の片隅の一期一会の大切さを説く。
  12. 人間の存在理由と深海の生き物 意味や役割があるから愛されるわけじゃない - 潜水艇の耐圧殻から深海調査の実況に挑むヴァルターは、実況に耳を傾ける子供たちに深海のダイナミックな地形や世界観を語り、生きることに懐疑的なゾーイに理由などなくても生きることの尊さを説く。

第五章 指輪

指輪

ウェストフィリアの深海調査はアステリアの人々に深い感銘を与え、ヴァルターとリズの絆もいっそう深まる。しかし、二人の幸福を嫉む者が巧妙な罠をしかけ、アルに嫌疑が掛けられる。ヴァルターは一人の市民として公聴会で証言するが、二人の関係は複雑だ。そんな中、アルは有名議員の息子との見合いを画策し、リズは心ならずもMIGの後継者として公の場に立つ。

  1. 『復讐するは我にあり』世界を変える稀少金属ニムロディウムと企業の攻防 - 宇宙世紀。みなみのうお座に打ち上げられた探査機が一つの鉱石を持ち帰る。そこから発見された新物質ニムロディウムによって科学技術は著しく発達し、宇宙開発も加速的に進むが、最大のニムロデ鉱山がファルコン・マイニング社の手にわたったことで、ファルコン・グループによる一党支配が始まる。
  2. 文明の根幹を成すレアメタル ~独占する鉱山会社と伝説の祖父 - ファルコン・マイニング社の脅威は、ニムロディウム市場のみならず、最大の宇宙植民地である惑星自治領トリヴィアの政財界、しいては、人類の母星であるステラマリスにまで及ぶようになっていた。マクダエル特殊鋼とは、技術特許をめぐって争った因縁の仲。彼等の魔の手はついにマクダエル一家の生命に及ぶ。
  3. 『人こそ資本』 深海の鉱物のような人間の可能性と『捨てるな』の精神 - 水深3000メートルから海底鉱物資源の採掘に挑むアルは深海の作業に必要な潜水艇のパイロットを求めている。優れた経営者でもあるアルの経営哲学は『人こそ資本』。その心髄は可能性を捨てるなという祖父の教えだった。
  4. 今成すか、永遠に行わないか ~決断と意思の強さが成功に導く - アステリアの大海原を前に、海中技術の困難を思い知ったアルは、長年かけて練り上げた海底鉱物資源の採掘計画について断念しかけるが、今成すか、永遠に成さないか(Nunc aut numquam)を自身に問いかけ、決意を新たにする。愚かな二番手は永久に一番手の尻をを舐め、何を見せても二番煎じと嘲られるだろう。
  5. 屁理屈だけは超一流 ~今日の利益か、数億年後の生命の価値か - 宇宙的な時間の流れから見れば、人類の栄枯盛衰などほんの一瞬に過ぎないし、まして個人の寿命など、ろうそくの炎みたいに儚いもの。人の心は宇宙より広いと思えるのは、人間の内側にも何かを創り出すエネルギーが満ちているからではないでしょうか。
  6. アイデアと可能性 ~今は必要なくても、いつかは誰かが必要とするかもしれない - どうして誰も欲しがらないと決めつけるんだい? 遠い将来、それこそ何世紀という未来、海のど真ん中でも建設可能な干拓都市の構想が必要とされるかもしれないよ.。君が言うような『空想ごっこ』を真剣に考え抜いた人がいたから、恒星間航行も可能になったんだ。
  7. オランダの治水と締め切り大堤防 ~意思が世界を形作る - オランダのアフシュライトダイク(締め切り大堤防は、1927年から1932年にかけて、国家的な治水事業の一環として建設された。全長32キロ、幅90メートル、高さ7.25メートルの威容を誇る治水施設の魅力を写真と動画で紹介。
  8. この世が生きるに値する場所と分かれば、子供自ら学ぶようになる - 人は言葉によって、自身の考えや欲求や感情を表し、相手に伝えることができます。一言といえど、そこには、発した人の心があり、動機があります。言葉とは、全人的な存在なのです。言語療法の先生は「自分を好きになること」が大事と教えます。
  9. 『これが生だったのか。それなら、よしもう一度!』 自己肯定と魂の幸福 ・ニーチェの哲学より - 自己肯定の精神は、代々、読み継がれたニーチェの著書『ツァラトゥストラ』のテーマでもあります。「この人生をもう一度生きてもいい(永劫回帰)」と思えるほどに、自分自身と生きることを愛する。それが本当の意味での問題解決=自己超克だと言って聞かせます。
  10. 数百年に一度の水害に備えて ~オランダの堤防と治水 - 海も大地も何千年、何万年の長いスパンで活動を続けています。『絶対に大丈夫』などと、どうして言えるのか。オランダ南部、ゼーラント州のスヘルデ河口に建設された締切堤防や防潮堤防によって作り出された湖の画像などを掲載しています。

第六章 断崖

断崖

社会の牽引役を失ったアステリアでは、市民の混乱を尻目に、巨大海上都市『パラディオン』の建設に向けて大きく動き出す。ヴァルターとリズはそれぞれの立ち位置から懸命に働きかけるが、強硬な勢力の前に抗う術もない。そんな中、悲惨な事故が生じ、断崖絶壁に立たされたヴァルターの目に映ったものは…。

  1. デザイナーの心 意匠と形 ~社会への思いやりが都市設計の基盤となる - 指導者を失い、政治も混沌とする中、ヴァルターは自身の海洋都市『リング』のアイデアの是非を問う為、アンビルトアーキテクトの先鋭を訪れ、肝心なのはデザインに現れる心のフレームワークだと助言を受ける。
  2. 庶民を顧みない開発会議と政治の現実 ~社会の分断と公人の無関心 - 勢いを増す新興勢力となおざりにされる既存社会の間で対立が深まる中、リズは市議と共に経済特区開発会議を膨張し、政府中枢の見解を知る。共存共栄の理想を追うリズに対し、市議は政治の現実を諭すが、リズは傍観者であることを非難し、理解と協力を請う。
  3. 生きる海は一つ 対立を超えて共存共栄の未来へ ~優遇される新興勢力と取り残される既存社会 - 導き手を失ったアステリアでは今後の海洋開発をめぐって意見交換会が開かれるが、優遇される新興勢力と忘れ去られる既存社会の間で激しい対立が起きる。平和を願うリズは論争を収めようとするが、議論はエスカレートし、ヴァルターは共存共栄を訴える。
  4. 民意か、自己表現か 公共の芸術としての建築 ~デザインに現れるエゴと野心 - 富裕層向けの海洋都市の建設を急ぐメイヤーと密かに面談したリズは、公共性を無視し、己の野望を遂げようとする心根に違和感を覚える。庶民の福祉は後回しかと問い質すリズに、メイヤーは「百の理想を説いて聞かせるより、小切手一枚切った方が早いと嘲笑う。
  5. 何を得ても満たされない嫉妬と競争心 人間としての誇りはどこへ?  - オリアナはプリンセスのようなエリザベスに嫉妬し、持ち物でも生き方でも彼女に勝とうとするが、何をやっても満たされない。子守を口実にヴァルターに接近するが、「自分がやらないことを言い訳するな」と諫められる。
  6. どこに作り手の心があるかはデザインを見れば分かる 海上都市の建設をめぐって - 世界的建築家フランシス・メイヤーは海のヴェニスと称えられる壮麗な円環の海上都市『パラディオン』のメリットを強調するが、エヴァは「どこに作り手の心があるかはデザインを見れば分かる」と懐疑的だ。
  7. 今異議を唱えるか、永久に口をつぐむか - アステリアの未来を占うペネロペ湾開発のアイデアコンペで下馬評通りメイヤーの海上都市『パラディオン』が一位に選出される。だがその公共性に懐疑的なヴァルターは質疑応答で異議を唱え、自身が考案する干拓型の海洋都市『リング』を対案としてぶつける。
  8. 謝って済むものではない巨大建設 ~その負債、誰が支払うの?  - ペネロペ湾開発のアイデアコンペで壮麗な円環の海上都市『パラディオン』が第一位に選出されたが、莫大な建設費用と維持費、富裕層向けの限定的な物件であることから反発も強く、政府の委員会では建設の是非を巡って議論が交わされる。
  9. 相対する二つの海洋都市のアイデアと庶民の不安 全ての人に分かりやすく - 壮麗な海上都市『パラディオン』の建設計画が進む中、公共性や耐久性に懐疑的なヴァルターは干拓型の海洋都市『リング』を対案として提示するが、いまひとつ一般人にアイデアが理解されてないと指摘され、大衆の支持を得るには「全ての人に分かりやすく」が鍵だと気付く。
  10. 干拓型海洋都市『リング』のプレゼンテーション 価値ある仕事と社会の礎 - アイデアの是非が問われる中、干拓型の海洋都市『リング』のプレゼンテーションに立った彼は「ボルトを締める人の手にも意思がある」と社会の基盤となる庶民の誇りや意欲の重要性とについて説き、「信用こそ資本」と建設費に勝る価値を創出することを宣言する。
>海洋小説『曙光』MORGENROOD

海洋小説『曙光』MORGENROOD

宇宙文明の根幹を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業と海洋社会の攻防を舞台に描く人間ドラマ。生きる道を見失った潜水艇パイロットと愛を求めるフォルトゥナの娘の恋を通して仕事・人生・社会について問いかける異色の海洋小説です。
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Amazonの海洋学ランキングで一位を記録した異色作。

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