海底鉱物資源 システム

海底鉱物資源を採掘せよ 世界を変える稀少金属と世界の鉱山問題

海底鉱物資源 システム

海底鉱物資源の採掘について

マンガン団塊やコバルトリッチクラスト、海底熱水鉱床といった『海底鉱物資源』の存在は20世紀半ばから知られてきました。
世界中の海洋機関で研究が進められ、様々な採鉱システムのモデルが設計されてきましたが、いまだ商業的に採算のとれる採鉱システムは確立されていません。

もっとも、パプアニューギニアで展開するNautilus Mineralsや、日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構が牽引するプロジェクトは相当に出来上がっていて、早ければ、21世紀半ばには世界初の採鉱システムがお目見えするかもしれません。

参照 『海底鉱物、大量採掘に成功 20年半ば、商用化目指す』(京都新聞) 
http://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20170926000098

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ところで、なぜ鉱業なのか……といえば、『鉱業問題が手軽に分かる『コルタン狂想曲』と『ブラッド・ダイヤモンド』にも書いているように、政治、経済、製造、医療、娯楽、地球上の全ての人の暮らしは、鉱物資源に支えられているからです。世界紛争の元を辿れば、たいがい、そこには資源が絡んでいます。どれほど優れた技術や設備があっても、製品の元となる鉱物資源が入手できなければ、全ては絵に描いた餅にすぎないからです。

そして、世界の鉱業における最大の悲劇は、資源産出国の多くが後進国や紛争地域に偏り、豊富な資金や技術を有する先進国の進出によって、本来、恵みを得るべき地元民が何の利益も得られないばかりか、逆に、資本国の思惑に翻弄され、劣悪な環境から抜け出せなかったり、紛争の犠牲になったり、決して幸せを掴むことはできないからです。

しかし、こうした世界の構図も、海底鉱物資源の採掘――それも機械化された安全かつ効率的な採鉱システムによって、大きく変わる可能性があります。もし、日本が、鉱物資源を輸入する側ではなく、世界中に鉱物資源を輸出する側に立てば、それだけでも経済の仕組みは変化し、国際政治にも影響するようになるでしょう。

宇宙開発ばかりが注目され、海洋の方は人気も関心も今一つですが、日本の海洋技術は、世界経済のみならず政治やライフスタイルも変えるポテンシャルを秘めています。世界有数の調査船、調査技術、研究者や技術者を数多く有しています。四方を海に囲まれた日本こそが、世界を変えるトリガーになれるわけです。これは決してマンガではなく、誇張でもありません。嘘だと思うなら、JAMSTEC | 海洋研究開発機構の公式サイトを見て下さい。こんな凄いものが20世紀から運航され、世界のトップクラスの頭脳と肩を並べて研究開発に打ち込んでいるのです。国民の大半が無関心なだけで、海のNASAなのです。

私もまた1995年からこのネタを追いかけ、願いと問題意識を込めて、長編小説に書きました。

サイトには、主に技術的な部分を掲載しています。

少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

【リファレンス】 レアメタルと海底鉱物資源の採掘について

本作の要である『レアメタル(稀少金属)』とは、「地殻中での存在量が少ない」「産出箇所が特定の地域に集中している」「分離・精製が困難である」(放射線医学総合研究所パンフレットより)と定義されています。

『ニムロディウム』は架空の金属元素で、惑星ネンブロットのニムロデ鉱山から産出される『ニムロイド鉱石』に多量に含まれます。

これらのレアメタル、及び、レアアースは、その他の常用金属と組み合わせることで(もしくは単体で)、耐久性、強度、耐酸性といった、金属の持つ性質を飛躍的に高めることで知られ、自動車、電子機器、電化製品、建材、医療機器など、幅広い製品に使用されています。まさに現代文明の根幹を成す物質です。

本作では、主に宇宙文明を支える技術や製品にニムロディウムが大量に使われており、その産出地であるニムロデ鉱山、およびニムロイド鉱石の市場がファルコン・マイニング社にほぼ独占され、市場はおろか、政治経済にまで悪影響を及ぼすようになったことが話の発端です。

これに対して、ニムロデ鉱山以外の、低品位な鉱石からも、低コストで、効率よく高純度のニムロディウムを回収する技術を開発したのが、マクダエル特殊鋼のノア・マクダエル。これがビッグインパクトとなり、次第に風向きが変わり始めます。

しかし、依然としてファルコン・マイニング社の影響は大きく、価格操作や同業者圧力、環境汚染や労働者の人権侵害といった問題解決には至りません。
そこで、アステリアの海に存在する海底鉱物資源に目を付けたのが孫にあたるアル・マクダエルです。
アステリアのティターン海台には、基礎岩を被覆するクラストの形でニムロディウムが存在します。それを洋上プラットフォームから完全自動化・無人化で採掘しようというのがアルの計画です。

こちらは地球上に存在する稀少金属の中でも、もっとも賦存量が少ないとされるイリジウム。

こちらは常温で直ちに液体化するセシウム。また反応性に富み、発火しやすい性質を持ちます。

こちらは歯の治療にも使われるパラジウム。美しい銀白色で、宝飾品などにも使われています。

こうしたレアメタルのユニークな性質を利用して、「錆びない金属」「どんな形にも加工できる金属材料」「放射線をカットする化粧クリーム」などが作られるわけですね。

しかしながら、地上に賦存する量が少なければ、その価値は黄金よりも高くなりますし、産出地も先進国の都市部ではなく未開の大地に集中します。しばし、その鉱床は紛争地域や貧困国に偏る為、暴力や汚職や人権侵害といった重大な問題を引き起こすのです。

言い換えれば、そこに依存しない生産と供給が可能になれば、一国の政治や産業はおろか、世界の力関係さえ変えるインパクトを持ちます。

海底鉱物資源の採掘もその一つであり、アル・マクダエルは未だ手つかずのアステリアの海にその可能性を見出すわけです。

ちなみに本作に登場する海底鉱物資源の採鉱プラットフォームのモデルについては、実際に開発中の『Nautilus Minerals』を参考にしています。

場所は、パプアニューギニア近隣のソロモン海です。

『Offshore Production System Definition and Cost Study』NAUTILUS Minerals
Document No: SL01-NSG-XSR-RPT-7105-001
『Seafloor mining robots and equipment nearing completion to mine for gold, silver and copper』
http://www.nextbigfuture.com./2013/10/seafloor-mining-robots-and-equipment.html

海底鉱物資源の採鉱システムのイメージはこんな感じ。
簡単そうに見えますが、技術的にどれぐらい難しいかは、海洋科学や海洋工学関連の文献を読むと、容易に想像がつきます。

こちらは海底鉱物資源の成り立ちから採鉱システムまでトータルに解説する動画です。

こちらは実際のオペレーションの模様をシミュレーションしたもの。
海底で採鉱機がどのように機能するか、アニメーションで分かりやすく説明しています。

こちらは水深4000~6000メートルの大洋底に大量に存在するマンガン団塊

海洋鉱物資源の概要/マンガン団塊(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)もご参照下さい。

海底鉱物資源と採掘に関する概念を簡潔に紹介。決して遠い未来の話ではありません。

ちなみに水深数千メートルはこういう規模です。

最も深い海底からエベレスト山を立てても、まだ海面に届かない。

海の深いところは、世界で最も高い所より、まだ深いんですね。

海の深さ エベレストよりも深い

海がどれくらい深いか、アニメーションで解説。海の一番深いところは、エベレスト山よりまだ深いのです。

海底鉱物資源に関する参考文献

第一章 運命と意思 【フォルトゥナ号】 のシリーズ

このパートは海洋小説『曙光』(第一章・運命と意思)の抜粋とリファレンスです。詳しくは作品概要をご参照下さい。

>海洋小説『曙光』MORGENROOD

海洋小説『曙光』MORGENROOD

宇宙文明の根幹を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業と海洋社会の攻防を舞台に描く人間ドラマ。生きる道を見失った潜水艇パイロットと愛を求めるフォルトゥナの娘の恋を通して仕事・人生・社会について問いかける異色の海洋小説です。
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Amazonの海洋学ランキングで一位を記録した異色作。

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